Bits Archive: May 2006

May 5, 2006

熱狂の日

今日と明日は東京フォーラムでモーツァルト漬けだ!


東銀座のオフィスから有楽町まで歩いて気がついたことだが、休日の銀座は何と外車が多いことか。皆さんお買い物なんでしょうか。今日に限らずやはり数で勝るのはBMW、その次はベンツ。ポルシェも5台くらい見た。カレラばかりじゃなくSUVのカイエンまであった。ボルボも多かったがXC90はなかった。あとはジャガーとミニ、松屋の前あたりの路駐は外車しかなかった。


さて本題に移る。今日聴いたのはペーター・ノイマン指揮のハ短調ミサ。今回の「熱狂の日」企画では3つの団体がそれぞれハ短調ミサとレクイエムを演奏するので、どっぷりと聴き比べさえできる。ただ僕の場合、1月のガーディナーの演奏会の記憶が鮮烈すぎて、今回は期待半ば。今日はケルン室内合唱団の演奏で、会場はAホール。ここは正直ホールとしてはあまり良い条件とは言えない。1階席で聴くと音は頭の上を通過するばかりという感じで、距離以上にステージが遠く聞こえる。コーラスと楽団がなぜか融合しない。ソリストも自分だけという感じで統一感がない。オケと一緒に練習したのかなと思うと、若手ソプラノのヒョンさんはケルンで実績があるという。多分ノイマンさんの姿勢だと思う。アンコールにAve Verum Corpusを歌ったが、これはオケが静かにコーラスを包むようにサポートして、素晴らしかった。
ハ短調のミサは実は6月末にガーディナーがグラナダのアルハンブラ宮殿で演奏会をするとの耳寄りな情報があって、僕は発売日にネットで数時間で売り切れたチケットを確保してしまった。その演奏会は一日がハ短調、もう一日がレクイエムとなっていた。サンフランシスコでは両方演奏してくれたのに。ただ開演が夜の10時ということでは仕方ないのかも。ということで、今年はミサ曲ツアーが続きそうです。



May 7, 2006

熱狂の日2

La Folle Journéeの最終日です。開演は21時45分なのでまず表参道ヒルズに出かけた。お目当てはヴィム&ドナータ・ヴェンダースの写真展だった。


実は一週間後には我々のイベントHD2 Emotion!を開催するというのに、僕は明日から本社に出かける羽目になってしまい、現場をもう一度目にしておこうかなという気持ちもあった。原宿からヒルズへの道は人で溢れ、歩くのもままならない状態、その割にヒルズの中はそれほどの混雑もなく、写真展はむしろ閑散としていた。
ヴェンダースの「バリ・テキサス」は確か東京映画祭の招待作品で、NHKホールで上映されたのを僕は見た。彼のピークはその後の「ベルリン・天使の詩」かな。今回の写真展で久しぶりに彼の名前を聞いたが、京都から尾道の風景描写というのはもはや年を取ってしまった僕には感性を刺激する何物も得られない写真で、”So what?”と自分に問いかける始末だった。小津安二郎に心酔していた人だから、そうした目で見ればよいのかも知れないが、単なるエキゾチズムと見えてしまうところもある。


さて一方、今日のコンサートはS席2000円で収穫は大きかった。弱冠35歳の指揮者フランソワ・ザビエル・ロスが展開してくれたのは流麗且つ軽やかに疾走するモーツァルト、最初の「皇帝ティト序曲」で今夜の演奏会は当たりだと確信した。Cホール2階席最前列というのも昨日より遙かに納得の音響だった。2曲目はピアノ協奏曲第27番、オケは同じように疾走を始めるが、ピアノの小山実稚恵さんはどうしてもイチ、ニ、サン、シ、と四股を踏んじゃう感じで軽く走ってくれない。何でもないフレーズがきらめかない、モーツァルト弾きになれない典型的な音楽家と感じた。彼女の名誉のために僕はそれでも小山さんは力のあるピアニストだと思っています。


今日の出し物は「熱狂の日」最終公演ということで、どうも最後のオペラ、最後のピアノ、最後の協奏曲を並べたんじゃないかなと思う。だから3曲目はクラリネット協奏曲ということになる。ソリストはフランスからポール・メイエという若手で、彼も「えっ、そのテンポでそのまま行くの?」と思わせる疾走ぶりで、アクロバティックな演奏で腕の確かなところを見せつけて、楽しげな舞台だった。「もしやこの後打ち上げもあるし、遅れないよう急いでるんじゃ・・・」とか妄想した。でもこの音楽祭はひとつずつの演奏会を短めに構成していて、ちょっとリゾート音楽祭的な感覚もあって、出演者たちはプレッシャーもなさそうで参加が楽しいんじゃないかなとも思う。これって良いことです。結局、彼らはこの3曲を見事に予定の1時間を少し超えただけで終えてしまった。従って我々の帰宅も12時数分過ぎ。ありがとうでした。




May 12, 2006

パリ、テキサス、サンフランシスコ

サンフランシスコのマーケット通りを歩くとVirgin Megastoreがあって、向かいはApple Storeだ。「今、CD/DVDの$10セールをやってるよ」と聞いてはいたが、今日は夕食に出かけて近くを通ったのでついでに立ち寄ってみたら、今日からはそれが$8セールになっていた。


ただし並んでいるバーゲン品は懐かしいアルバムばかりで、その中に巡り合わせとでもいうのかなあ、先日取り上げたヴェンダースの「パリ、テキサス」を見つけた。あの古い映画がドルビーデジタル5.1となっているし、監督のコメントも収録と書かれていたので、きっと何かの引き合わせだよねと買うことにしてレストランに向かった。(僕のマックノートはリージョン1にして使っています。)


$8のシールが輝くパリ、テキサスのDVD
© 20th Century Fox Home Entertainment, Inc.


などと悠長なことを書いているけど、東京は月曜のイベントオープンを前に卓袱台をひっくり返したような惨状ではないかと不安がよぎる。これまで実際のところ綱渡りの連続で、HDイベントを仕掛けたこと自体の無謀さを思い知らされる毎日だった。良く乗り越えてきたものだと思うこれまでの壁をここに並べてみよう。


●音楽クリップでHD完パケなどほとんど存在する状態にないこと。当然です。あゆは制作に凝るし、35ミリフィルムを回していると聞いていたけど、それは撮影時のことであって、これまで仕上げてきたのは使い道がはっきりしている標準解像度での制作のみ。

●デモ素材が集まってきたので、V編作業の検討に取りかかった途端、ビデオテープを目的のファイルにキャプチャできるスタジオがないことでつまずく。まず信頼できるパソコン環境がない。しかもエンコーダも見当たらない。ここでもHDそのものが黎明期なんだ。

●あれこれ苦労してやっとかすかな可能性を手繰っても、作業時間の見当が付かないし、2時間を超える長時間素材を扱ったケースもない、ラフに計算するととんでもない金額の作業料金がはじき出される。素材が90分と見ても1.4TBのディスクサイズが必要。どこを見ても八方ふさがりとなる。

●気を取り直して、数分だけテスト用にファイルを作り、社内でマックを使ってエンコードを始める。ここでも連続作業はできなくて、フレームごとにエンコードしてつなぐので半日くらいかかる。このままだと本番用ファイルは24時間連続運転を続けても開催日に間に合いそうにない。

●Ghostの長編ものはバーバンクのDemografxグループにあずけてH.264エンコードしてもらおうと現地との相談を始める。

●テストエンコードができたのでiMacで再生を試みると、1080Pデータがギクシャクとした動きで、演算限界に合わせて自動的にフレーム数を落としてしまうことを発見。720Pファイルなら何ら問題なかったのに。

●ここでこの分野に詳しいF社さんに教えを請う。必要なのはQuad G5 (メモリ4Gとグラフィック7800GTなど、約60万)とXserve RAID 3.5TB (約100万)、それ以外で使える環境はないだろうとの見解。デモ機はG5と決断。アップルさん、安くしてください!!

●HDMI動作確認で直視型ディスプレイの最大解像度が1080iまでであることを突き止める。うーん、どうしよう。つまり放送レベルに準拠ということだ。欲張っても仕方ない。

●バーバンクからハードディスクに致命的クラッシュがあって作業のやり直し、間に合わないかもと中間報告。

というようにほぼ毎日1件、苦難の連続ですが、あと2日間でどう乗り越えるかは後日報告しましょう。僕がこちらで役に立てるのは土曜日の便で帰る際、会場用のハイスツールLyra 2脚を手荷物で運ぶという役が残っている。会場設営は到着する日曜の夜中だ。




May 18, 2006

表参道で徹夜作業

表参道ヒルズでのHDイベントが始まった!今日はすでに4日目になる。綱渡りの状況は前回書いたが、とにかく動いている。日曜には僕も成田から17時頃に会社に着いた。会場用のスツールも無事2脚サンフランシスコから運んだ。



写真はオープン当日、月曜朝4時過ぎの状況。デモブースはこの2時間後くらいに完成した。仕上がりについてはヒルズ側の責任者の方たちにも喜んでいただけた。8時過ぎに大型プラズマディスプレイの搬入・数人がかりでの取り付けを開始、これが終わってやっとシステムチェックになる。開店時間までの残りは2時間しかない。



結局13時からの第1回目のデモには間に合わず、絵と音がまとまって再生できたのは5分くらい遅れてからのこと。その悪戦苦闘ぶりはすでに社員ブログに書かれているとおりだが、18時からはメディア関係へのお披露目を隣のワインバーBISTY'Sで催したので、本社CEOとコンシューマー事業部門のSVPも参加させた。何とか初日を終えて閉店後にシステムの見直し作業などに入ったので解散は23時。身体がボロボロの感じだった。


僕はその後経営会議に組み込まれて会場には顔を出せないでいるが、今日は行くつもりだ。すでにHD体験に驚いていただいたり、音の凄さを見直してもらったりと、好反応を得ているが、一方で映像のプロの方からはこの程度でHDかとの厳しい指摘もある。ただ一般ユーザーが手にすることのできるレベルの再現であることに違いはないと思うし、多くの人がどう感じたかは記念品付きのアンケートを実施しているので、手応えは集計できると考えている。


デモ会場周囲の照明がディスプレイに映るなど、改善の余地ももちろんあるし、運営中もオーディオインターフェースのMOTUと特別展示のD-BOXチェアは不安を抱えながら動いているという綱渡りは依然続いているが、それでもここまでイベントが動いているという現実には満足しているし、ご協力いただいた各社を含め、業界各社からも期待していただいているように感じる。まだ長丁場なので、できるだけ多くの人に来てもらえたらいいですね。




May 29, 2006

表参道の未体験ゾーンへ


館内の大型モニターにも!

週末の20・21日には評論家潮氏の講演が組まれているが、昨日のセッションでもパナソニックの製品発表前のBlu-rayプレーヤー(試作モデル)が持ち込まれていることについて、あり得ないくらい異例中の異例と強調されていた。僕もその通りだと思う。

松下さん、有り難うございます!

Blu-rayのデモには「チキン・リトル」や「ナルニア国」が含まれているので、子供連れのファミリーも楽しく鑑賞していただいていたが、僕は「世にも不幸福な物語」のエンコードをバーバンクの開発部門にお邪魔して見せてもらった時に度肝を抜かれたので、この予告編の到着を心待ちにしていた。今、このクオリティーを体験できるのはここだけでしょう。

もうひとつ、国内初体験のひとつに最前列に置かれた2席のソファがある。このいささか巨大な椅子はD-Boxと呼ばれ、実はモーション・シミュレーターだ。しかもアミューズメント・パークなどと同じ業務用レベルの3次元駆動を実現できるトップレベルの製品である。先日本社幹部がイベントを覗きに来たとき、ドルビー会長はひとつ開けてあったこの椅子を奥さんに譲って自分は地べたに座り込んで鑑賞した。ドルビーさんは経営者というより、半田ごてを手にああでもない、こうでもないと作業に熱中する朴訥なエンジニアという風情の人なので、僕らもそのまま気配りしないでいる。


これまでのところD-Boxの評価はまちまちだが、素直に楽しいと感じていただいたお客さんも多いし、モーションとシーンのシナジーに疑問とのコメントもある。サラウンドのミキシング同様、体感をどうコントロールするかはエンジニアがシーンに合わせて創造的に仕込む作業なので、新しい分野として期待できると考えている。
「ちょっと自分の部屋にはねえ」と思わせるあの巨大さはアメリカ向け製品なのでもっとスリムにできるし、現に開発中の映画館用モデルはむしろシンプルで好感が持てる。




May 29, 2006

表参道の特別拡張版は進化したか?

最終週に突入の今朝はヒルズの会場に出かけて模様替えに参加、僕はシステム以外のところで気配りすることにした。席数は3-4-4-3の後にハイスツール4とし、立ち見客の滞留スペースを確保。一応3列目までが何とかリアスピカーの線上に入るかな。

チェアの位置は前の人が邪魔にならないよう前後で横にずらして調整した。あとは背景が画面に映るのを極力抑えるよう、スポット照明と、告知パネルの位置を調整した。
さて、この状態でN君の努力の産物、再エンコードファイルを見せてもらう。僕は絵画や写真は趣味ではあるが、技術知識も視力も弱いので画質には言及しないことにしている。それでもちょっと見ただけでトランペット、シンバル、ピアノなどの楽器の光沢感など質感が歴然と違っていて、情報量の差なんだと思う。HD映像についてはこれまでプロの方をはじめ幾人かに辛口コメントをいただいているので、できればもう一度来てみていただいて、これで何点くらいもらえるものか聞いてみたい。



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さらに続く・・・